サーフィンとは何か?

いつも海で会うオチ師匠に、『サーフィンとは何か?』という本を借りました。
ページ数は多くありませんが内容が深く、読み進めるうちに二度ほど寝落ちしながらも何とか読み切りました。

筆者も述べているように、サーフィンの本は数あれど、社会学や哲学の視点から掘り下げたものは決して多くありません。

自分のサーフィン人生も“無限”から“有限”へと意識が変わりつつある昨今。
あらためてサーフィンと真剣に向き合うきっかけにもなったので、ここで紹介したいと思います。

著者の並丘太郎さんは、ほかに著作が見当たらないことから職業作家ではないようです。
1971年生まれということで、自分と同世代でもあります。

おそらく、サーフィンを続ける中で、ある日ふと
「この素晴らしくも難解な行動を、言葉として残したい」
そう思い立ったのではないでしょうか。

本書は、ライフスタイル・文化・ローカルといった比較的親しみやすい題材から入り、最後は“精神世界”とも言えるテーマで締めくくられます。

排他的な慣習として語られがちなローカリズムも論理的に分析。
スキーやスノーボードのように人工的にフィールドを増やせない、限られた空間での行動だからこそ生まれる仕組みとして説明されています。

さらに、法律で認められた「入会権(いりあいけん)」一定地域の住民が規約に従って山林・原野・水面を共同利用し、収益する慣行を引き合いに出し、地元民が海を“支配する”というローカルの論理についても考察しています。

精神世界の章では禅の考え方を取り上げ、サーフィン中に訪れる「無心」の状態を解説。
それは、考えずとも身体が自然に動く“剣の世界”にも通じるものだと語られています。

実際、サーフィンは上達するほどに思考より反応が先に立ち、身体が自然と動くようになります。
常に変化する波に合わせるには、考えてから動いていては間に合わない…。

本当にその通りだと感じます。

このほかにも、ここでは触れきれないほど深い内容が詰まっています。

サーフィンを“人生の一部”として捉えている方には、ぜひ一度手に取ってほしい一冊です。

【サーフィンとは何か ― 海上の社会と精神世界】

「サーフィンについてもっと深く考えてみたい」という人のための本。サーフィンは人生を左右するほどの強い影響力を持つ。一度その魅力に取り憑かれると、思考やライフスタイルは変化する。こうしたサーフィンの持つ強い磁力とは何なのか、ということの追求から本書ははじまる。

サーファー達が浮かんでいる海上の社会は、独特であり、ここに見られる人間関係は、現代において他に見られない貴重な社会的側面があり、こうしたサーファーの社会についても本書は考える。

サーフィンの特徴的な慣習である「ローカリズム」も本書は深く掘り下げている。「ローカリズム」は、サーフィンにおける永遠の論争の的であり、その本質にせまる。

さらに本書は、サーフィンがもたらす精神的効用を考える。サーフィンに関する精神世界を追求していくと、サーフィンにどういう意識で向き合うかによって、人生を変えられる可能性も示している。

社会学や哲学の観点からも、サーフィンとは面白い題材であることを本書は示している。

【目次】
1.サーフィンはなぜ取り憑かれるのか
2.サーフィンはスポーツか
(1)ライフスタイル
(2)サーフィン文化
3.サーフィンの社会と習俗
(1)海上の社会性
(2)序列の自然的発生
(3)つながりの発生による序列の変化
(4)規範
(5)慣習の難点
(6)道徳
4.ローカリズム
(1)ローカリズムの発生
(2)ローカリズムの構造
(3)慣習としてのローカリズム
5.ショートボードとロングボードの並立
(1)ロングボードのリバイバル
(2)ロングボーダーの流入の影響
(3)サーフィンの排他性との関係
6.サーフィンの精神世界
(1)海の厳しさ
(2)サーファーの本性
(3)サーフィンの精神的効用
(4)サーフィンと純粋経験
(5)サーフィンと禅


サーフィンとは何か ― 海上の社会と精神世界
https://amzn.to/4pkB5pO


人気ブログランキング

コメントを残す